がん探知犬センター「セント・シュガー」 研究論文

DOGLAB
がん探知犬研究論文

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 論文
  4. 乳がんを正確に判別

乳がんを正確に判別

乳がんを正確に判別-学術サイトbiologyで論文公開

がん探知犬が子宮頸がん、さらには子宮頸部上皮内腫瘍グレード3の患者からの尿サンプルを正確に検出。

Akihito Yamamoto 1、* Seiryu Kamoi 1、Keisuke Kurose 1、Marie Ito 1、Toshiyuki Takeshita 1、Shoko Kure 2、Katsuichi Sakamoto 3、Yuji Sato 4、およびMasao Miyashita 5,6

1  東京都、日本医科大学産科婦人科
2  東京都、日本医科大学病理学および総合的腫瘍学病理学科
3  福島県、(財)慈山会医学研究所付属坪井病院婦人科
4  千葉県、シュガージャパンがん探知犬育成センター
5  東京都、日本医科大学
6  山形県、ツインピークス医学研究所(TPLM)、ツインピークス医学研究所
受付:2020年10月7日、受理:2020年11月3日、公表:2020年11月6日

概要:犬が匂いを嗅ぐことによる腫瘍の検出は、がん診断の新たな手法になる可能性がある。この試験の目的は、訓練を受けた犬が子宮頸癌患者の尿サンプルを識別できるかどうかを評価することである。尿サンプルを、子宮頸癌患者34例、CIN3患者49例、子宮良性疾患患者49例および健康被験者63例から採取した。試験を合計83回実施し、陽性サンプル1つを含む5つのサンプルを犬に嗅がせた。訓練を受けた犬は、がん患者の尿サンプルと対照の尿サンプルを正確に識別することができた。今回の試験では、犬が匂いを嗅ぐことによるがんの検出が、非侵襲的で費用対効果の高い子宮頸癌のスクリーニング手法になり得ることが示された。

抄録:(1)背景:これまでの報告で、胃、肺および膵臓のがんが探知犬により検出できることが示されているが、結果にはばらつきがある。本稿では、高度な訓練を受けた犬を用いて、子宮頸部の前癌病変および悪性腫瘍を有する患者の尿にがん特異的な匂いがあるかどうかを確認した。

(2)方法:子宮頸癌、グレード3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)、子宮良性疾患の患者および健康被験者から合計195の尿サンプルを採取した。各試験は,がん患者の尿サンプル1つと異なる対照の尿サンプル4つを用いて行った。5つの尿サンプルを、それぞれ別の箱に入れた。がん探知犬ががん患者のサンプルが入った箱の前で立ち止まり座ったとき、その試験を陽性と判断した。

(3)結果:子宮頸癌患者83例(子宮頸癌34例、グレード3子宮頸部上皮内腫瘍患者49例)、子宮良性疾患患者49例、健康被験者63例を登録し、尿サンプルを採取した。83回実施した二重盲検試験のうち83回で、訓練を受けた犬は子宮頸癌患者の尿サンプルを正確に識別できた。

(4)結論:訓練を受けた犬は、がんの進行度にかかわらず、すべての子宮頸癌またはCIN3患者の尿を正確に識別することができた。

  1. 緒言

婦人科系癌は、診断と治療の継続的な進歩にもかかわらず、世界的に、依然としてがん関連の罹患と死亡の上位を占める原因のうちのひとつである。

対策型検診や任意型検診では、科学的なエビデンスがある従来の細胞診や液状細胞診を用いた子宮頸癌検診が推奨されているが[1,2]、日本人女性の検診受診率は約20%と欧米諸国に比べて非常に低く、その原因はプライバシーの問題や手技に伴う痛みなどである可能性がある[3,4]。

ヒトパピローマウイルス検査または血清腫瘍マーカーのいずれかを用いた検診は、対策型検診としては推奨されていない[5]。現在の検診方法の欠点を考慮すると、これに代わる高精度で低コストの非侵襲的な検診技術が必要とされている。

犬が匂いを嗅ぐことによるがんの検出は、がん検出の新たな手法になるかもしれない。メラノーマを検出するために飼い犬を用いた最初の報告は非常に斬新であり、腫瘍から特徴的な匂いが放出されることを示唆した[6]。その後の報告で、尿および呼気のいずれのサンプルでも犬が匂いを嗅ぐことで様々な種類のがんを検出することが示されている[7-10]。子宮頸癌における犬によるがん検出は、2017年に初めて報告された[11]。

この試験では、訓練を受けた探知犬が、新鮮な子宮頸部塗抹サンプルを用いて子宮頸癌を検出することができた。犬が匂いを嗅ぐことによって尿サンプルから子宮頸癌を検出する試みは、報告されていない。

私たちは、嗅覚訓練を受けた犬が、尿サンプルを用いて子宮頸癌患者と非子宮頸癌患者を識別できるのではないかという仮説を立てた。本試験の目的は、子宮頸癌の診断済み患者の尿サンプルを用いて、犬が匂いを嗅ぐことによるがん検出法の有効性を検討することであった。

 

  1. 結果

2.1. 臨床的患者特性

子宮頸癌患者83例(グレード3子宮頸部上皮内腫瘍49例、子宮頸癌34例)、子宮良性疾患49例(子宮平滑筋腫39例、子宮内膜症8例、子宮脱2例)、および健康対照63例の計195例が本試験に登録された。患者の数と年齢を表1に示す。年齢分布は3群間で差がなかった(p = 0.915)。

 

表1. 群および年齢ごとの患者

診断 Cx.がん* 良性 健康 p
(数)

 

n=88 n=49 n=63
年齢(年)

平均 ± SD

44±15 44±8 44±10 0.915

Cx.がん:子宮頸癌、良性:子宮良性疾患、健康:健康対照。*子宮頸癌は、グレード3の子宮頸部上皮内腫瘍を含む。

子宮頸癌患者の臨床病期は、I期(10例)、II期(4例)、III期(14例)およびIV期(6例)であった。病理診断は、扁平上皮癌(27例)、腺癌(5例)および未分化腫瘍(2例)であった(表2)。

2. 子宮頸部病変/腫瘍の臨床病期と病理診断CIN3:グレード3の子宮頸部上皮内腫瘍、SCC:浸潤性扁平上皮癌、腺:腺癌、    他:未分化癌。
2.2. 検出試験時の犬の状態検出試験は、合計83回実施した。試験期間中、犬には有害事象、外傷または疾患はみられなかった。犬の集中レベルは、すべての試験で高かった。2.3. 検出試験の感度と特異度子宮頸癌またはCIN3患者の尿サンプルが犬の探知試験ですべて陽性となった。
子宮良性疾患または健康な対象者の尿サンプルは、すべて陰性であった(表3)。
3. 異なる患者群の尿サンプルについて犬が匂いを検出した結果CIN3:グレード3の子宮頸部上皮内腫瘍。
子宮頸癌患者と対照群で、尿サンプルに対する犬の匂い検出の感度と特異度は、従来の病理組織学的診断と比較して、ともに1.00であった。 

  • 考察

訓練を受けた犬が子宮頸癌とCIN3の尿サンプルを対照(子宮良性疾患と健康被験者で構成)の尿サンプルと識別することは実行可能だと思われる。我々の確立した方法を用いて、一連の二重盲検試験で、犬は100%の感度と特異度で子宮頸癌とCIN3の尿サンプルを検出できた。本試験は、訓練を受けた犬が尿サンプルを用いて子宮頸癌を検出する精度の高さを示した初めての試験である。公表論文で報告されている犬の匂いの検出精度には、ばらつきがある。Willisらは、犬は膀胱癌患者の尿を平均41%の成功率で識別できることを報告した[8]が、McCullochらは、一般的な飼い犬を訓練して、肺癌で0.99と0.99、乳癌で0.88と0.98の感度と特異度で、肺癌患者と乳癌患者の呼気サンプルを対照被験者の呼気サンプルと識別できることを報告した[9]。さらに、Horvathらは卵巣癌組織と対照組織を比較し、感度を100%、特異度を97.5%と報告した[10]。これらの一連の試験では、犬ごとに差異が存在する可能性がある。本試験では、がん患者と対照の尿サンプルを用いて、非常に高い特異度が示された。試験に用いた犬の嗅覚が重要であることから、十分に確立され、既存の試験[12]で用いられた訓練方法を適用した。さらに今回の試験では、犬の能力を保つため、温度や湿度などの試験環境を厳密にモニタリングした。もともと、がん発見のための犬の訓練は、がん患者の呼気を使って行われた。後に、我々はこれを予備テストで尿サンプルに用いることができた。続いて我々は、訓練を受けた犬は、尿サンプルを用いて子宮頸癌患者と非子宮頸癌患者を識別できるのではないかという仮説を立てた。尿サンプルの採取は、非侵襲的で費用対効果に優れている。さらに、尿サンプルは、採取や取扱いの容易さから、今後の子宮頸癌検診に理想的である。Cornuらは、尿サンプルを用いて、犬が匂いを嗅ぐことによって前立腺癌を検出することを報告した[13]。前立腺癌患者33例と健康対照33例の尿サンプルを試験に用いた。訓練を受けた犬が尿を嗅ぐことで、前立腺癌を91%の感度と特異度で検出できた。尿サンプルを用いた犬が匂いを嗅ぐことによる子宮頸癌の検出は、これまで公表されていない。本試験の結果は、尿サンプルを用いた子宮頸癌の犬によるがん検出法が高感度・高特異度で実現可能であることを初めて示す。犬の匂い検出の可能性は、子宮頸癌を日常診療で検出するための実用的かつ正確な方法であると考えられる。本試験の結果により、子宮頸癌とCIN3の揮発性バイオマーカーの存在が示され、これらのバイオマーカーを同定することが子宮頸癌の非侵襲的な早期発見のための理想的な方法となる可能性があることが明らかになる。揮発性有機化合物(VOC)は、呼気、血液、尿など全身に排出される。VOCは遺伝的背景や環境的要因および病歴(合併症など)の影響を受けるため、ヒトの身体によるVOCの生成量は個人差が大きい[14]。しかしながら、VOCは多くのがん腫と関連しており[15-27]、代替的ながんスクリーニングマーカーとして使用できることが示唆されている。犬によるがん検出は、最近のカエノラブディティス・エレガンスによるがん検出法と同様に、これらの癌関連VOCに基づいていると考えられている[18,28]。さらに、子宮頸癌における正確な化合物やその組み合わせの解明が必要である。VOCに基づく新しい癌診断方法を開発するために、今後も試験が重ねられることが望まれる。本試験では、前がん病変だけでなくCIN3や上皮内癌も検出できたことから、犬によるがん検出は、がん発現の早期発見や予防薬や治療薬を用いた治療介入に有用である。このような治療介入は、がん治療の費用を大幅に削減し、生命を救う利益をもたらす可能性がある。この試験におけるすべてのCIN3症例は、腫瘍細胞の浸潤がないにもかかわらず陽性反応を示した。この事実は、特異的なVOCが悪性細胞の増殖の初期段階から放出されるという考えを裏付けるものである。腫瘍細胞、免疫細胞および他の細胞型はVOCを放出すると考えられていることから[27]、急速に増殖する腫瘍細胞と炎症性細胞のいずれもが、犬が検出できる特異的なVOCを放出している可能性がある。
別の報告では、VOCは酸化ストレスの代謝産物である可能性が示唆されている[29,30]。しかしながら、がん特異的なVOCがどのようにして生成されるのか、その機序はまだ解明されていない。特定の高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸部の持続感染が子宮頸癌の原因の一つであることは十分に確立されている[31]。特に16または18型の高リスク型のHPVは、ほぼすべての子宮頸癌で同定されている[32,33]。HPV感染とVOC生成との相互作用はまだ評価されていない。尿サンプル中のHPVのDNAの検出によるHPV感染のスクリーニングは、1991年に初めて検討された[34]。感染段階の違いや細胞崩壊の可能性を考慮すると、HPVのDNAは、細胞内エピソームDNA、細胞関連ウイルスDNA含有粒子、遊離ウイルスDNA含有粒子または遊離ウイルスDNAのいずれかの形で、細胞ゲノムに組み込まれた状態で尿中に現れることがある(細胞結合型または無細胞型)。HPV感染とVOC生成の相互作用のエビデンスを提供するために、本試験で採取した陽性尿サンプル中のHPVのDNAを検討することは非常に興味深いと思われる。本試験には、いくつかの限界がある。第一に、今回の試験には、CIN1およびCIN2患者の尿サンプルは含まれなかった。現在、日常診療では、CIN1とCIN2の病変はフォローアップが必要である。今後の試験のためには、CIN1とCIN2の検出、およびこれらの分類を識別することが有用である。第二に、本試験は一匹の犬を用いた。今回の試験で使用した犬は、訓練所で最も能力の高い犬であった。このメスの犬は、当初海難救助犬として訓練されていたが、その能力が他の犬よりもはるかに優れていることが判明した。すべての犬ががんの臭いを嗅ぎ分ける能力が高いわけではないため、優秀な犬を採用することが難しいこともある。第三に、犬の訓練には費用がかかり、適切な施設での時間も必要である。犬の訓練には最低でも1年はかかる。確立された方法で犬の訓練を効果的に行うためには、犬の訓練所や専門のトレーナーとの連携が必要である。臨床現場では、スクリーニングする陽性・陰性サンプルが無数にあることもある。さらに、現在の試験の設定では、犬ががんを検出しているのではなく、特有のサンプルを認識しているという懸念がある。したがって、次回の試験では、すべて陽性を用いたりすべて対照を用いたりして、異なる数の陽性と対照を用いて試験を施行し、対照の数をより多くして一度しか使用されないようにする必要がある。残念ながら、この訓練を受けた犬は死亡したため、すぐにフォローアップを行うことは困難であった。我々は、現在他の犬を訓練しており、今後の試験のために追加実験を行う準備をしている。私たちは、パイロット試験として我々が今回行った試験の結果が、がん検出における新たながん検診方法の開発を提供することを期待する。我々の次のステップは、再現性と有病率について、訓練を受けた他の数匹の犬を用い、症例数を拡大した追加試験を行うことである。しかしながら、世界での利用を目指すための我々の主要な目標は、犬が感知したがん特異的な揮発性有機化合物を、新たなスクリーニング方法としてガスクロマトグラフィーで検出することである。 

  • 材料および方法

4.1. がん患者と対照サンプル提供者2011年1月から2012年10月の間に、日本医科大学附属病院または(財)慈山会医学研究所付属坪井病院で、子宮頸癌またはCIN3のいずれかの診断を受けた患者と健康被験者が登録された。すべての癌症例および良性疾患症例において、生検または切除した組織の病理組織学的評価により鑑別診断が得られた。
尿サンプル採取前に外科手術を受けた患者、および他のがん腫の患者は除外した。健康被験者を、血液検査、胸部X線検査、腹部超音波検査、マンモグラフィーおよび婦人科検診などの全身的ながんスクリーニング検査で検証した。本試験はヘルシンキ宣言に掲げる原則に従って実施され、そのプロトコルは日本医科大学附属病院(東京都)および(財)慈山会医学研究所付属坪井病院(福島県)の倫理委員会(IRB#23-03-156)の承認を得た。
参加する可能性のある者全員に試験説明文書を渡し、それぞれから書面による同意を得た上で登録した。
4.2. 尿サンプル子宮頸癌またはCIN3病変のいずれかの患者については、手術または併用化学放射線療法の前日に自然尿を紙コップ(ハーンカップラミネートA、日商産業株式会社、東京都)に採取し、その後、無菌試験管(ステリル・SPチューブ、栄研化学株式会社、東京都)内に移した。各試験管をキャップで密封した後、選択したサンプル1 mLを犬による探知試験に使用するまで-80°Cで保存した。対照被験者の自然尿を同様の方法で採取し、保存した。尿サンプルを、採取後最大6か月間、検査に使用した。凍結した尿サンプルを、室温で解凍して試験に使用した。
4.3. 犬と訓練千葉県館山市のシュガージャパンがん探知犬育成センターの犬舎にいるマリーンと名付けられた一匹の犬が、この試験で用いられた。この試験は、米国国立衛生研究所の「実験動物のケアと使用のためのガイド」の推奨事項に厳密に従って実施された。本プロトコルは、日本医科大学附属病院の施設倫理委員会(IRB#23-03-156)で承認された。この試験では、犬の選択が重要だった。この犬は、がん患者の呼気と尿の両方を選択的に嗅ぎ分ける能力を確認する予備試験に合格していた[12]。この犬はもともと水難救助犬であったが、後に、プロのトレーナーからがん検出の訓練を受けた。訓練方法は、同じ犬を用いた既存の試験[12]に記載されている。簡潔に述べると、この犬はがん探知犬育成センターから採用された9歳のメスのラブラドールレトリバーであった[12]。この犬は、当初はさまざまながん腫の患者の呼気の匂いを嗅ぐ訓練を受けた。訓練の段階で使用された呼気サンプルと尿サンプルは、インターネットで募集された数百人のがん患者と約500人の健康被験者から採取された。訓練は、4つの段階で構成された(図1)。第1段階で、食道癌患者1例と対照4例の呼気サンプルを使用した。サンプルは、ペーパーフィルター付き呼気サンプリングバッグから紙コップに移された。2日後、サンプルカップ5つを床に置いた。まず、トレーナーは犬に食道癌患者の基準呼気サンプルの匂いを嗅がせ、次に5つのサンプルカップから食道癌の呼気が入っているカップを識別させた。犬が癌サンプルを正しく識別したら、テニスボールが与えられた。翌日から、肺癌と胃癌の患者の呼気サンプルを用いて、同様の訓練が実施された。第2段階で、エンドキャップを着けた状態で呼気サンプリングバッグを使用した。食道、肺、または胃癌の匂いを、呼気サンプリングバッグに入れた。第3段階で、最初に犬に基準呼気サンプルの匂いを嗅がせ、次にトレーナーが他のがん腫のバッグを識別させた。その後、他のがん腫や対照のサンプルを追加して、訓練を続けた。これらの段階には、約12か月を要した。第4段階で、犬は尿サンプルを用いた訓練を受けた。まず、犬に食道、肺、胃または乳癌のいずれかの基準尿サンプルの匂いを嗅がせた。次に、この犬に他のがん腫の尿サンプルを検出させることを試みた。訓練を完了するのに要した日数は、わずか3日であった。訓練中、犬は呼気サンプルを基準として使用することができた。本試験の前に、この犬はすでにこの方法で、食道癌、乳癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、肝細胞癌、胆管癌、大腸癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および膀胱癌の尿サンプルを検出することが可能であった。犬の集中が継続できなかったとき、犬による探知試験は実施されなかった。試験が実施できなかった日の条件として、極端に高温多湿な天候の日が挙げられる。
1. 訓練の4つの段階を示す。第1および2段階で、犬は基準と同じがん腫の呼気サンプルを検出しようとした。第3段階では、陽性の呼気サンプルは基準とは異なるがん腫であった。第4段階では、尿サンプルを用いた。4.4. 試験箱試験箱は、水色の塗装が施された、幅27 cm、高さ30 cm、長さ20 cmの木製保存容器であった(図2)。各箱の内側には、尿サンプル管を置ける高さ10 cmの仕切り壁が取り付けられた。そのため、犬は試験サンプルに直接触れることはなく、各箱は金網で覆われていた。テストを実施する際、5つの試験箱を床に1メートル間隔で直線上に配置した。
2. 試験箱。エンドキャップを付けた試験管サンプルをこの箱に入れた。4.5. 子宮頸癌およびCIN3患者の尿サンプルの検出子宮頸癌およびCIN3患者の尿サンプルを検出する手順は、がん患者の呼気サンプルの検出手順と同様であった。簡単に言うと、子宮頸癌とCIN3患者の新しい尿サンプルを入れた試験管を、健康対照のサンプルを入れた試験管とともに、各テストで使用した。癌およびCIN3サンプルが放出しているおそれがある揮発性有機化合物(VOC)が対照サンプルを汚染する可能性を避けるため、試験管を個別に保管した。数字をランダム化するチャートを使用して、尿サンプルを箱に置く順序を決定した。数字をサンプル表面に表記すると同時に、第三者がシリアル番号を試験番号に変換した。試験番号と試験箱番号を解答用紙に記録した。犬は正解すると、テニスボールで遊ぶことができるというご褒美を与えられることになっていたため、トレーナーと犬はできるだけ早く回答を知る必要があった。そのため、回答カード形式を使用した。回答用紙では、試験箱番号の隣のマル印は子宮頸癌またはCIN3患者の尿サンプルを、バツ印が記載されていれば対照患者の尿サンプルを示した。その後、一度剥がすと再貼付できないシールで印を覆った(図3)。
3. 試験で使用された回答用紙。試験サンプル番号と箱番号が回答用紙に記載された(a)。試験箱番号の隣のマル印は癌サンプルを(b)、試験箱番号の隣のバツ印はその他のサンプルを示した(c)。その後、再貼付できないシールで印を覆った。正解(b)と不正解(c)の例を示す。
助手が、回答用紙に記載されている番号のとおりに試験管サンプルを箱に入れた。犬、トレーナーおよび助手はサンプルの中身を知らされなかったため、この試験は二重盲検法であった。試験の開始時に、犬に集中する訓練を実施した後、前述の訓練段階で使用した乳癌患者の呼気サンプル5 ccを嗅がせた。
次に、トレーナーが犬にリードを付けて試験箱のそばを歩かせ、尿サンプルを嗅がせた。犬は、子宮頸癌またはCIN3患者の尿が入っている箱の前に座ることが期待された(図4)。
4. 尿サンプルの癌の検出。犬は事前に準備されたがん患者の呼気サンプル5 mLの匂いを嗅いでから(a)、各試験箱の前を通り過ぎ(b)、振り向いて(c)、その後、癌サンプルが含まれると思われる箱の前に座った(d)。
助手は回答用紙の試験箱番号の横にあるシールを剥がし、結果を確認した。試験の適正な実施を検証するため、回答用紙を郵送で回収し確認した。各試験について、犬の集中レベル(高、普通または低)を評価し、記録した。犬の集中レベルが高い日には、必ず試験を実施した。高温多湿の日などの極端な環境条件や、地震や台風など異常な自然現象の間は、犬の集中レベルが低かったため、試験を実施しなかった。
4.6. 犬の反応の評価実施したすべての試験で、犬は、すべての5つの箱の匂いを十分に嗅いだ後、陽性サンプルの前に座った。犬が3秒間自発的に動かなかったことを確認した後に、試験の判断を決定した。その時間が経過しないうちに犬が動き始めた場合、試験の判断を一時的に中断した。このような場合、犬が試験箱の前に座って、まる3秒間動かなかったときに評価を決定した。犬の反応は、2つの正しい行動と2つの誤った行動に分類された。正しい行動は、(1)子宮頸癌またはCIN3患者の尿サンプルが入ったサンプル箱の前に座ること(感度計算では真の陽性)および(2)対照サンプルを嗅ぐだけで、その前に座らないこと(真の陰性)であった。誤った行動には、(1)対照サンプルの前に座ること(偽陽性)および(2)子宮頸癌またはCIN3患者のサンプルの前に座らないこと(偽陰性)があった。
4.7. ステージングと統計分析子宮頸癌の病期の評価は、国際産婦人科連合によって書かれた基準に基づいた。診断精度は、子宮頸癌またはCIN3のいずれかの病変に対する犬の陽性尿サンプルの識別の感度(真陽性率)および特異度(真陰性率)を、従来の組織病理学的方法による診断と比較して計算した。結果を、平均 ± 標準偏差として表した。分布の正規性を、連続データである年齢について検討した。分散分析を使用して3つの群間で年齢を比較したところ、データは正規分布を示した。検定は両側で、p <0.05 を統計的に有意とした。統計分析を、EZR(自治医科大学付属さいたま医療センター、埼玉県)を使用して実施した[35]。

  • 結論

結論として、この試験では、訓練を受けた犬が、子宮頸癌とCIN3患者の尿サンプルを良性子宮疾患と健康被験者の尿サンプルから識別することに成功したことが示された。犬によるがんの検出は、女性の子宮頸部悪性腫瘍に対する非侵襲的で費用対効果の高いスクリーニング手法になり得る。著者の貢献度:概念化:M.M.、方法論:M.M.およびY.S.、バリデーション:M.M.、S.K.(Seiryu Kamoi)およびT.T.、形式的分析:A.Y.、調査:Y.S.、リソース:Y.S.、データ整理:A.Y.、M.I.、K.K.およびK.S.、執筆-原稿作成:A.Y.、執筆-レビューおよび編集校正:S.K.(Shoko Kure)、指導:T.T.、プロジェクト管理:M.M.。著者はすべて、公開版原稿を読み、同意した。資金提供:この研究は、外部からの資金提供を受けなかった。謝辞:著者は、有益な議論と支援を頂いたオハイオ州立大学医学部のGary D Stoner教授に心より感謝する。利益相反:著者は、利益相反がないことを宣言する。
出版社注:MDPIは、公開された地図および機関の所属における管轄権の主張に関して中立的な立場を維持する。© 2020年、筆者による。特許権使用権者MDPI、スイス、バーゼル。この論文は、クリエイティブ・コモンズ表示(CC BY)ライセンスの契約条件の下で配布されたオープンアクセスの論文である

(数)

 

n=88 n=49 n=63
年齢(年)

平均 ± SD

44±15 44±8 44±10 0.915
臨床病期 例数
CIN3

I期

II期

III期

IV期

病理診断

CIN3

SCC

n = 49

n = 10

n = 4

n = 14

n = 6

 

n = 49

n = 27

n = 5

n = 2

診断 結果 例数
CIN3 (n = 49) +

49

0

子宮頸癌 (n = 34)
I期 (n = 10) +

10

0

II期 (n = 4) +

4

0

III期 (n = 14) +

14

0

IV期 (n = 6) +

6

0

子宮良性疾患
平滑筋腫 (n = 39) +

0

39

子宮内膜症 (n = 8) +

0

8

子宮脱 (n = 2) +

0

2

健康対照(n = 63) +

0

63

煩わしい精密検査の前に

資料請求・お問い合わせはこちら